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昔昔の話だ。僕たちが幼い頃の話。
父は随分実力主義だった。
もし、父の時代に天使界と悪魔界が仲が良ければ悪魔界にいたであろうくらい完璧なる実力主義だった。
(そもそも祖父もたいへんな実力主義者だったようだが。)
そんな父は兄弟の力比べをよくしていた。
お互いに年が十を超えていたアズエルとエーエルを争わせていた。
体術、魔力、魔法持久力…争えるだけ争わせた。
…ほとんどの勝利を長男、アズエルが納めていた。
故にエーエルはアズエルが嫌いだった。
否、嫌い、だ。
僕とアニエルはその争いを見るだけだった。
僕が十になり一度だけ次男、エーエルと争ったが、僕は魔力でことごとく引き分け、また体力ではことごとく負けた。
それからすぐに父が亡くなり、この争いは幕を閉じた。
跡取りはやはりアズエルだった、誰ひとり不平不満は漏らさなかった。
それでも未だにエーエルはアズエルが嫌いだ。
僕とアニエルには優しく微笑む2人は決して仲良くなることがない。
僅かに羽音がした。
窓から羽を広げ飛び立つ兄の姿が見えた。
周りのSPや従者たちも飛び立って、僅かな羽音が大きな羽音に変わる。
一際白く輝く羽根は、エーエルの魔力で燃え尽きた。
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