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やけに老けた顔のこの男の名は
伊九次 梨男(いくじ なしお)
現在43歳、高校生の娘や息子に嫌われ始め、女房にも飽きられている、何処にでも居そうな普通の会社員である。
しかし、この男一つだけ普通でないところがあるだ。
その、普通でないところとは…………
異常なまでに、気力もなく役に立たない、ということ。
女房に飽きられている原因の一つだ。
つまり、意気地なし……。
当の本人はもう諦めているらしく、気にしている様子はまったくない。
伊九次にとっては、生活できるだけの金さえ稼げれば今はいいのだろう。
おや?
突然、濁った目の伊九次が、家の中をのそのそ と歩き出した。
一体どうしたのだろう…………。
「……」
どうやら、床に髪の毛が落ちていたらしい。
それを拾いゴミ箱に入れると、伊九次は寝室へと向かっていった。
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