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「一体……ここは」
伊九次は信じられないという風に濁った目を見開く。
一体何を見ているのかと言うと。
「これは夢なのか?」
あまりにリアルな夢に、伊九次はただ立ち尽くす。
周りの人たちは、見たことはあるが、実際着ることのない服をきている。
「ここは……江戸時代なのか?」
ガヤガヤと騒がしい声。
車などないし、建物がすべて低い。
「……なんて夢だ」
伊九次は自然と自分の頬を手でつねる。
痛くない。やはり夢だ。
そんなことを考えているうちに、自分の足と手が勝手に動きだす。
「あ、あれ!?なんで勝手に」
歩く速度はどんどん加速する。
気づけば、大きめの橋の前まで来ていた。
「うわぉっ!げっほ、ごほ」
急に足と手の動きが止まった。
あまりにいきなり過ぎて、咳き込む伊九次。
やっと咳が止まったと思ったら、周りに居た人々が、すっかり消えていた。
橋の前にたっているのは、自分一人だけ。
「な、なんだ?」
そう言いながら辺りを見渡すと、どこからともなく特徴的な笑い声のようなものが聞こえてきた。
「ほっほっほっほ」
どこから聞こえているのか分からず、キョロキョロと視線を彷徨わせる。
すると天から差す光と共に、間の抜けた声が聞こえた。
「ここじゃよん。ここっ」
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