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「なっ……! どうしてあなたがゴシンボックリを? あの聖戦は俺と雄平しか知らないはずなのに……」
「あんな遊びのなにが聖戦じゃ。罰当たりな」
美人は深々とため息をつくと、再び着席を促した。
……ゴシンボックリの名を出されては、邪険にするわけにはいかない。文敏にとって、あの聖戦の名は友情の証なのだ。今度の文敏は、素直にそれにしたがった。
「あの、どうしてゴシンボックリを知ってるんですか?」
聞いておかなければなるまい。
文敏と彼の友人しか知らぬはずのあの遊びを、なぜこの女性が知り得たのか。
すると、女性は意外そうな表情を彼に返した。
「ん? なんじゃお主。覚えておらぬのか? 知ってるも何も、あれをお主に教えたのは私ではないか」
「……へ?」
あまりにも予想外の回答に、文敏の口から奇妙な声がもれる。
「い、いやいや、そんなはず無いですよ。だってあれは俺の夢の中で──」
「マナちゃんが教えてくれたんじゃろ?」
文敏の言葉を遮って彼女が言い放ったそのセリフに、文敏の思考は瞬時に凍り付いた。
そして、一人の少女の姿が彼の脳裏によぎる。
幼き日の夢で出会った銀髪の少女。
不思議な口調が特徴的な小柄の女の子。
──マナちゃん。
文敏は、言葉を失うしかなかった。
「ふふ。驚いておるようじゃの。申し遅れたが、私は真波──鳥居、真波じゃ。……久しぶりじゃな、文敏。お主にとっは夢で会って以来、私にとっては二年と三日ぶり、か」
そして続けて語られた彼女の話は、驚愕で埋め尽くされていた──。
× × ×
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