第四章 火ノ宮煉

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緑が深く自然豊かな山の中―――。 近くには小川が流れて、木々の上では小鳥が囀ずっている。 そんな山の中に、日本には似つかわしくない建築物が建っている。 その建物から、まるで春の暖かな陽射しを思わせるオーラを纏った女性が散歩をするために出てきた。 その後ろには一人の侍女らしき人物が女性について出てきた。 そして、建物から少し歩いたところに綺麗な花々が咲き乱れた場所があり、そこに着くと侍女は女性に問いかけた。 「…ゼウス様は、あのお方をどうするおつもりなんでしょうか?」 「私にはゼウスの考えは分からないわ…。 けれども、ゼウスが彼を見つけてしまった以上…」 女性は悲しそうに俯いた。 その時、今まで活き活きと咲いていた花々が急に輝きを失ったように見えた。 「デメテル様…」 『デメテル』と呼ばれた女性は、祈るように空を見上げた。
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