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でかでかとポップな看板を飾る遊園地の門前に着くと、俺たちは入場券とパスポートを出した。
長谷川さんは俺たちの分も出すつもりみたいだったけど、それは俺も蜜葉も全力で否定した。
さすがにそれはダメだ。
「じゃ、早速行く?」
蜜葉がいたずらな表情で千尋ちゃんに顔を煽る。
「ぅえ゛っ……」
案の定、千尋ちゃんは変なリアクションをし、俺たちはプッと吹き出した。
「……まぁまぁ、蜜葉!もう少し後でいいじゃん、一番の見せ場なんだしさ」
「そうねー。じゃああのジェットコースターから行きましょ」
助け舟を出したはいいものの、どこでもゴーイングマイウェイな彼女はさっさとジェットコースターへ歩を進める。
長谷川さんと千尋ちゃんを窺うと2人が苦笑しながら頷いたので、俺たちはそれに乗ることになった。
上下左右に動くそれは一番最初には少しキツすぎたらしい。
俺はまるで漫画に出てくる女の子のようにぐったりとベンチに座っていた。
本望じゃないのに、蜜葉は容赦なく『ダッサイわねー』とため息をついた。
「長谷川さん」
俺にドリンクを買って来てから、彼女は長谷川さんに言う。
「ごめんなさい、葵音のバカがこんな様だから、昼まで2人で回っておいてくれますか?」
「……そうですね、では12時半にフードコートに集合、という形にしましょうか」
「何かすみません……俺のせいで」
「仕方ないよ、蜜葉がいきなり馬鹿なことするから!ね、気にしないで」
それぞれが各々のことを言い、この場は一旦解散となった。
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