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「たかはるみてみてー」
「なに…ぶふっ」
思わず吹いてしまった。
フリルのスカートに、ピンク色のラインが入った白ブラウス。
頭には星の飾りが施されたヘアピンを、手には同じ飾りのステッキを。
「白魔法少女マホたんだよ」
くるりと一回転してみせ、めかし込んだ服を見せてくれた。
別に似合わない訳ではないが、いや、似合いすぎて困るくらいだ。
しかしどんなに似合っても、由真は紛れもない男である。
可愛い、なんて評価されることを喜ぶ男がどこにいるのだろう。
「可愛いでしょ」
「……ああ」
ここにいた。
由真は嬉しそうにステッキを振り回す。
俺はため息をついて新聞に目を戻した。
申し訳ないが、女装に興奮するような趣味は持ち合わせていないのだ。
「ちょっとタカハル、ちゃんと見てよー」
「ああジョイアンツはまた負けたのか…」
「ブログ用の写真撮ってー」
「今年の羅区天は勢いに乗ってるな…」
由真はなにかやいのやいの喚いていたが、やがて諦め、渋々自分の部屋へ戻っていった。
やれやれ。
*
「なんだその格好は!?」
「へ?」
由真はキョトンとする。
振り返る瞬間に服がずれ、滑らかな肩が露わになった。
慌てて走り寄り、服を持ち上げる。
「あ、ごめん、パジャマ洗っちゃったから、タカハルの服借りた」
「か、借りたって…ああ動くな!」
余った袖をパタパタと動かす彼から、また服がずり落ちそうだ。
鎖骨は当然のように見え、下半身はすらりと伸びた白い柔らかそうな生足。
「下はどうした!」
「風呂上がりだし、熱いからいいや」
「良くない!」
俺の下半身が宜しくない。
ああそんな風に愛らしく首を傾げるな上目遣いをするな!
なんで?ではない!
「別にいいじゃ…」
「何か履いてこい!」
「……はぁい」
由真が渋々と言ったように立ち上がろうとした。
瞬間、服に膝がひっかかる。
「わ!」
「!」
ポスリ、俺の腕の中に倒れ込んできた。
衝撃で髪から香る、シャンプーの匂い。
ほんのり湿った髪と肌と、瞳。
いろいろと押さえていた理性が、ついにぷつりと音を立てて切れた。
「んっ!?」
噛みつくようなキスに、由真が腕の中で跳ねた。
少し身じろいだが、すぐに大人しくなる。
「んっ…は、いま、風呂入ったのに…」
「すまん」
「いいよ」
だってタカハルががっつくなんて珍しいもん。
由真は艶やかにほくそ笑んだ。
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