こんな二人

2/2
前へ
/6ページ
次へ
「たかはるみてみてー」 「なに…ぶふっ」 思わず吹いてしまった。 フリルのスカートに、ピンク色のラインが入った白ブラウス。 頭には星の飾りが施されたヘアピンを、手には同じ飾りのステッキを。 「白魔法少女マホたんだよ」 くるりと一回転してみせ、めかし込んだ服を見せてくれた。 別に似合わない訳ではないが、いや、似合いすぎて困るくらいだ。 しかしどんなに似合っても、由真は紛れもない男である。 可愛い、なんて評価されることを喜ぶ男がどこにいるのだろう。 「可愛いでしょ」 「……ああ」 ここにいた。 由真は嬉しそうにステッキを振り回す。 俺はため息をついて新聞に目を戻した。 申し訳ないが、女装に興奮するような趣味は持ち合わせていないのだ。 「ちょっとタカハル、ちゃんと見てよー」 「ああジョイアンツはまた負けたのか…」 「ブログ用の写真撮ってー」 「今年の羅区天は勢いに乗ってるな…」 由真はなにかやいのやいの喚いていたが、やがて諦め、渋々自分の部屋へ戻っていった。 やれやれ。 * 「なんだその格好は!?」 「へ?」 由真はキョトンとする。 振り返る瞬間に服がずれ、滑らかな肩が露わになった。 慌てて走り寄り、服を持ち上げる。 「あ、ごめん、パジャマ洗っちゃったから、タカハルの服借りた」 「か、借りたって…ああ動くな!」 余った袖をパタパタと動かす彼から、また服がずり落ちそうだ。 鎖骨は当然のように見え、下半身はすらりと伸びた白い柔らかそうな生足。 「下はどうした!」 「風呂上がりだし、熱いからいいや」 「良くない!」 俺の下半身が宜しくない。 ああそんな風に愛らしく首を傾げるな上目遣いをするな! なんで?ではない! 「別にいいじゃ…」 「何か履いてこい!」 「……はぁい」 由真が渋々と言ったように立ち上がろうとした。 瞬間、服に膝がひっかかる。 「わ!」 「!」 ポスリ、俺の腕の中に倒れ込んできた。 衝撃で髪から香る、シャンプーの匂い。 ほんのり湿った髪と肌と、瞳。 いろいろと押さえていた理性が、ついにぷつりと音を立てて切れた。 「んっ!?」 噛みつくようなキスに、由真が腕の中で跳ねた。 少し身じろいだが、すぐに大人しくなる。 「んっ…は、いま、風呂入ったのに…」 「すまん」 「いいよ」 だってタカハルががっつくなんて珍しいもん。 由真は艶やかにほくそ笑んだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加