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暖房と、料理で火を使ったことによって、部屋は十二分に温もっている。
満腹感に浸る俺は、ソファの上で船を漕いでいた。
襲いかかるというより、包み込まれるようで、抵抗など出来ない。
甘いものが欲しいと、思っていたはずなのだけれど。
しかし、食欲より睡眠欲は誘惑上手で。
俺はゆっくりと瞼を閉じ、流れるように横になる。
「由真」
頬に何か暖かい物がふれた。
撫でられ包み込まれ、タカハルの手だと言うことに気づくのに時間はかからない。
「ほら、アイス」
優しいテノールが耳をくすぐる。
交響曲のようで、俺の眠気を更に促進させた。
口を開くのもまどろっこしくて、動かずに態度で示す。
まったく、とあきれたような声が聞こえたが、そこに苛立ちや倦怠感など微塵も感じなかった。
「お前が食べたいって言ったのに」
うん、そうだねごめん。
脳内で謝れば、前髪をかきあげられ、額に別の温もりが一瞬触れる。
タカハルは俺のおでこ好きなのかな、なんて。
よくわからない思考が俺をとろけさせる。
そろそろ本当に眠ってしまいそうだ。
「まぁいいか… ……、…」
何か言ってる。
もうわからないけれど、幸せをくれる言葉なのはわかる。
膝と背中を支えられ、持ち上げられるのがぼんやりと感じられた。
ベッドへと歩む揺れが心地よくて、逞しい腕に抱かれる安心感。
ようやく俺は、考えることを止めた。
ありがとう。
おやすみなさい、また明日。
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