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おそらく嘘偽りはない。
そして、感情移入も。
……だからこそ俺は、このページをめくらなければならない。
今の俺には、それが必要な事は分かっているのだから。
皆様にも、少しだけ立ち止まって頂きたい。
俺がこれを読み終えるまで。
それだけで構わない。
木製の椅子に腰掛けると、ギシリとした音と固い木の匂いが鼻腔をくすぐる。
一度深呼吸をすると、その匂いが目一杯自分を満たしていくのが分かった。
覚悟は決めた。
もう迷わない。
自分の指先が、薄い紙をめくる感覚を伝えてくる。
振り返ろう、過去を。
封じ込めていた、魔の記憶を。
古い紙の匂い。
……そうして始めに見えてきたのは、「第一部」とだけ書かれた扉紙だった。
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