~prologue~

5/5
前へ
/18ページ
次へ
おそらく嘘偽りはない。 そして、感情移入も。 ……だからこそ俺は、このページをめくらなければならない。 今の俺には、それが必要な事は分かっているのだから。 皆様にも、少しだけ立ち止まって頂きたい。 俺がこれを読み終えるまで。 それだけで構わない。 木製の椅子に腰掛けると、ギシリとした音と固い木の匂いが鼻腔をくすぐる。 一度深呼吸をすると、その匂いが目一杯自分を満たしていくのが分かった。 覚悟は決めた。 もう迷わない。 自分の指先が、薄い紙をめくる感覚を伝えてくる。 振り返ろう、過去を。 封じ込めていた、魔の記憶を。 古い紙の匂い。 ……そうして始めに見えてきたのは、「第一部」とだけ書かれた扉紙だった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加