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昔々あるところに、それは仲の良い一組の男女がおりました。
彼らは日々互いに手を取り合い、励ましあって幾多の困難を乗り越え、ある日ついに1人の赤子を授かることが出来ました。
彼らは喜びました。
これから産まれてくる子の未来を夢み、自分達に出来うる限りの愛を注ぐ--まさに幸せの絶頂だったのです。
そしてついに、「運命の日」がやってきました。
男は祈りました。
赤子が無事に、無事に産まれるようにと。
そうでさえいてくれれば、他には何もいらないのだと。
「…ャァ…ォギャア!ォギャア!……」
果たして彼の願いが通じたのか、分娩室の扉の向こうから大きな泣き声が響いてきました。
男は待ちきれない気持ちで一杯でしたが、我慢して部屋の前で待ちました。
ですが、男がいくら待てども扉が動く気配はありません。
さすがにおかしいと思い始め彼が扉に手をかけると、ようやく医師が扉の向こうから現れました。
男は医師を見るなり質問攻めにあわせましたが、医師は深刻な顔つきで多くを語らず、ただ一言「ついてきなさい」とだけ言い残して再び扉の向こうへと消えてしまいました。
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