第一部~日記①~

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~~~~~~~~~ 昔々あるところに、それは仲の良い一組の男女がおりました。 彼らは日々互いに手を取り合い、励ましあって幾多の困難を乗り越え、ある日ついに1人の赤子を授かることが出来ました。 彼らは喜びました。 これから産まれてくる子の未来を夢み、自分達に出来うる限りの愛を注ぐ--まさに幸せの絶頂だったのです。 そしてついに、「運命の日」がやってきました。 男は祈りました。 赤子が無事に、無事に産まれるようにと。 そうでさえいてくれれば、他には何もいらないのだと。 「…ャァ…ォギャア!ォギャア!……」 果たして彼の願いが通じたのか、分娩室の扉の向こうから大きな泣き声が響いてきました。 男は待ちきれない気持ちで一杯でしたが、我慢して部屋の前で待ちました。 ですが、男がいくら待てども扉が動く気配はありません。 さすがにおかしいと思い始め彼が扉に手をかけると、ようやく医師が扉の向こうから現れました。 男は医師を見るなり質問攻めにあわせましたが、医師は深刻な顔つきで多くを語らず、ただ一言「ついてきなさい」とだけ言い残して再び扉の向こうへと消えてしまいました。
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