親に呪われている

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数時間後、母から車で迎えに来るように言われて電話で聞いた住所をカーナビに入力してむかった。 ついた先はゴミ屋敷と呼ぶに相応しいオンボロの家でなんとも言えない匂いを放っていた。 すでにパトカーと救急車が数台来ていて夜のゴミ屋敷を赤く照らしていた。 家のそとでオロオロした母を見つけ「いったいどうしたんだ?」と聞いている最中。 家の中からこの世のものと思えない異臭とともに頭蓋骨を抱いた秋山さんが警察に両肩を支えられて出て来た。 その匂いと異様さに俺と母は胃の中のものを道端に戻した。 野次馬たちも数人戻していた。 その後を追うように親父が出てきた。 真っ青になりながら「残念ながら亡くなっていたよ」と言った。 服は泥?だらけになっておりものチーズのようななんとも言えない匂いが染み付いていた。 俺は服を捨てるように頼んで、パンツ一枚の親父を警察まで送っていった。 後日。 母親を孤独死させてしまった秋山さんを教会のみんなでなぐさめた。 ただあのゴミ屋敷を見た俺としてはたとえ親とはいえ見捨ててしまうだけの事情があったのだろうと察した。 それでも秋山さんの中で罪悪感があったのだろう。だから呪われたなんて思ってしまったのだと思っていた。 落胆する秋山さんは毎日のようにお祈りに参加した。 俺の目から見ても少しづつ元気を取り戻しているように見えた。 元気になった秋山さんは逆に亡くなった母親の悪口を言うようになった。 はじめは教会のみんなも黙って聞いていたのだがだんだん耳に耐えられなくなって秋山さんを避けた。 それでも親父は黙ってうなずいて秋山さんの暴言を聞いていた。 ここからは母に聞いた話。 問題の冒頭の秋山さんが暴れて倒れて教会に警察が来た日の話だ。 いつものように暴言を吐き続ける秋山さんについに親父が言った。 「あなたのお母さんは首を絞められてもあなたを恨んだりはしていませんよ」 その言葉を聞いた秋山さんは泣き暴れながら「殺してヤルー」と何度も叫んで気を失ったという。 母は「お父さんはじめから知っていたんだよ」と言っていた。 秋山さんが自首をしたという話は聞いていない。 親父にこれでよかったのか?と尋ねると「誰にも言うな・・・」とだけ言った。 おわり
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