トリップ来る!!

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桃色の髪の少女は走っていた。  何を目的として走っているのかは分からない。  何かを目指して走る。 少し息を乱しながら。 『君にきーめた!!』 ふいに、少女の上の方から声が聞こえる。  幼いような……そうでもないような男の子の声。 それは少女にも聞こえたのか、少女は足を止めて宙を見上げる。  「…………?」  視線をキョロキョロと動かし、不思議そうに首をかしげる。  宙だけを見ている少女は気が付かない。  自分の足元に、まるで漫画に出てくるような魔方陣が描かれていることに。  いや……描かれている、というよりは浮かび上がっていると言うのが正しいのかもしれない。  すべてが浮かび上がった魔方陣は虹色の光を発し始める。  少女は気付き、魔方陣の上から逃げようとする。  だが、少女は逃げない。否、動けないのだ。  少女は光に包まれ…………そして消えた。  『最後の1人も成功!!』 幼い声の正体は、ニコッと微笑んだ。  ゆっくりと立ち上がり、その場をくるくると回る。 『皆……おしまい。  あ、でもでも!!   うまくいったら……もーっと増やそう。  そっちの方が楽しそうなんだもん』  桃色の髪の少女が消える前。  金色の髪がふわりと揺れ、 付けっ放しのTVが残り、 脱ぎかけた着物が落ち、 鉛筆が転がり、  ひなたの香りが流れ、 赤子の泣き声が響いた。        END
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