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いつもならば犬が使っているソファーの上には、知らない人が寝ていた。
橙色の髪がふわふわとすきま風に揺れていて、綺麗だと思った。
ふいにその人の瞳が開いた。黄緑色のかかった瞳が一瞬だけ見えた。
一瞬だけ、というのは私が思わず後ろへ飛び退いてしまったから。
その人はゆっくりと起き上がり、私の方を見た。
「……誰――――?」
そう尋ねたところで、千種と犬が帰ってきた。タイミングが良いような悪いような……。
「んあ~? おいブス女!! そいつ誰だびょん!!」
「知らない……」
私も聞きたい。
突然現れた不思議な人、その人は私と犬と千種を順番に見ていた。
「君……誰?」
「え、相馬空海?」
「相馬空海?」
「おう!!」
ビシッと親指を立ててその男の子はニカッと笑う。
私には出来ないような笑い方を出来るこの人のことが少しだけ羨ましいと思ってしまう。
それにしても…何処からやってきたんだろう?
そんなことを考えていると、男の子……空海が「そういやさー」と言いながら首を傾ける。
「何――――?」
「おまえらの名前は?」
空海に尋ねられ、千種と犬が顔を見合わせる。
何者だか分からない人に安易に名前を教えるな、って骸様に言われたことがある。
[………ーム……クローム]
突然名前を呼ばれて目を閉じれば、その声が骸様の声だということに気が付いた。
「[なんですか……骸様――]」
[彼には、名前を教えてもいいですよ?]
ふ、と骸様が優しく微笑んでくれたような気がした。
はい、と小さな声で返事をしてから頷く。
「我が名は……クローム…………クローム髑髏」
空海と視線を合わせ、出来るだけ声を振り絞って名前を言う。
横にいた千種と犬が驚いたような顔で私を見る。
「骸様が……名前を教えても良いって――――」
空海に聞こえないような小さな声で千種と犬に話し掛ける。
そうすれば千種も犬も納得したように頷いてくれた。
良かった――――
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