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その言葉に、俺は気付いてしまった。
聞こえるのは、さっきのカツカツって音だけじゃなく、バタバタと駆け回る子どものような足音や、トン トンとゆっくり歩く 足音、這いずるような足音などたくさんの足音になっていること。
いつの間にか増えたのか、最初からたくさんだったのかはどうでもいい。
とにかく足音の正体は、決して用務員さんや宿直の先生ではないことは確かだった。
「藤原君」
「何」
「走ろう」
「そうだね」
俺は藤原君を引っ張って階段を駆け上がった。後ろから聞こえる足音もそれに合わせるように速度が上がる。
息を切らしながらも命からがら自分の教室を見つけ、中に入った。隠れられそうな場所は…掃除用具入れのロッカーしかなかった。
俺は藤原君をロッカーに押し込み、自分も中に入るとドアを閉めた。藤原君がせまいの何だのブツブツ文句を言ってるが気にしてる場合じゃなかった。
足音は聞こえなくなっていたが、俺の心臓はバクバクいいっぱなしだった。
「佐倉、知ってる?」
藤原君が言った。
「心臓の音はね、ああいうものを呼び寄せるんだよ」
ニタリと、前髪に隠れていた目が笑う。途端に、
ドンドン!!!!!ドンドンドンドンドンドンドン!!!!!ドンドンドンドン!!!ドンドンドンドンドンドン!!!!!ドンドンドンドンドンドン!!!!ドンドンドンドン!!!!!
隠れていたロッカーを、何かが叩き出した。
「うあ゛ぁああっ!!!」
俺は耳を押さえて叫んで、藤原君にしがみついた。藤原君は
「だから言ったでしょ」
と面倒くさそうに言うとうざい、と一言、俺を引きはがし
「 や か ま し い わ !!! 」
とものすごい声で怒鳴った。そして用具入れのドアを蹴飛ばし、「帰るよ」と言ってスタスタ歩き出した。
俺は呆気に取られながらも慌てて藤原君を追った。辺りには何もいなかった。
「怖いと思うと寄ってくる、とか言うだろ。あれは、怖がることで鼓動が跳ね上がって、その音に釣られて寄ってくるんだよ」
とか意味のわからない蘊蓄を語りながら藤原君は校舎を出ていった。俺はもう何も言う気力がなかった。
その後藤原君と2ケツして帰り、しっかり肉まんをおごらされ、帰宅して布団に入ったときに肝心の宿題を再び忘れてきたことに気付いたが
もう全ては後の祭だった。
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