341人が本棚に入れています
本棚に追加
問題の旧校舎は暗くてすごく不気味だった。床はギシギシ言うしガラスはヒビ割れてるし作者なんかとっくに卒業してるであろう飾りっぱなしの書道作品も気味悪い。
俺ははずかしながら半泣きだった。が、藤原君はズンズン進む。そしてある教室の前で立ち止まった。
「ココ、面白いね」
藤原君の長い前髪から覗く目が弧を描いた。ヤバイと思ったがもう遅い。藤原君はガラリとドアを開け、床を軋ませながら中に入る。俺も恐る恐る後に続く。
中は普通の教室で、ずらりと机が並んでいた。やはり書道作品や絵が飾られている。しかし特に嫌な気配はしない。
むしろ俺はいつの間にか降り出していた雨が気になっていた。古い校舎に雨粒が当る音がする。傘持ってくればよかったなあと呟いたとき、藤原君がケタケタと笑った。
「ココはほんとに面白いよ!!!ちまちま針仕事した甲斐があった!!」
俺にはサッパリわからなかったが、藤原君には相当楽しい場所らしい。
俺は藤原君のほうが気味悪くなって廊下に出た。
すると、洗面台と鏡があった。何気なく鏡を覗くと、後ろの誰かと目が合ってドキッとした。
が、それは背後の窓ガラスに反射した俺だった。ホッとして振り返り、そろそろ本気で帰ろうと藤原君のいる教室に入った途端、俺は気付いた。
ガラスに反射した自分と、どうやって目があうんだろう。
「藤原君!!!!!帰ろう!!!!!」
俺は全身に冷や汗をかきながら、まだケタケタ笑っている藤原君を引っ張って走った。
怖くて怖くて仕方なかった。藤原君は相変わらず笑っていた。
旧校舎を出ると、雨は上がっていた。藤原君はまたブツブツと文句を言っている。
「キミのせいで半分も楽しめなかった。面倒な針仕事を頑張ったのに意味がないじゃないか」
「まあまあ。雨も上がったし、タイミング良かったじゃん」
俺は藤原君を宥めにかかる。が。
「キミはバカだろう?何を言ってるんだ。雨なんか降ってないじゃないか。」
と、キョトンとして言った。
「何言ってるんだよ、あんなに激しく雨音が…」
最初のコメントを投稿しよう!