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トンネルはひどく暗く、証明の類いは何もなかった。苔なのか何なのか知らないがヌルヌルするものがあちこちにあり、かなり気色悪い。
「めっちゃ不気味やなあ…なんか御誂え向き、ってカンジ?」
ヒロミちゃんの声がトンネル内に響く。二か月前に関西から転校してきたヒロミちゃんが藤原君とどうして付き合うまでに至ったかはよくわからないが、さすが藤原君の彼女と言うべきか度胸は座ってるみたいで、先陣きってサクサク進んで行く。俺はというと、藤原君にしがみつきながらノロノロ歩いているだけだった。
「ここ、すごいね」
真中まで来た頃、藤原君が嫌なことを呟いた。
「なにが、とか聞かないほうがいい?」
「噂では女の子だったけど、ほかにもたくさんいるみたいだね」
藤原君は俺を無視して続ける。
「年寄りにガキにおっさんに…やたら古いのもいるな、あとは…」
藤原君の言葉に俺はガクブルしていた。そんなにいるなんて、やっぱり来なけりゃ良かったとひどく後悔した。
しかしそのとき、
「なあー、これちゃうんー?赤いススキー」
トンネルにヒロミちゃんの声が響く。懐中電灯だろうか、グルグルと光がこちらに向けられる。
「でかしたヒロ、見せてみろ!!!」
藤原君が嬉嬉として走って行く。俺も追いかける、が。
「あいだっ!!」
なにかにつまづいてすっころんだ。あっという間に藤原君達は闇に消え、俺は取り残された。不安になって半泣きになり、
「藤原君ー!!ヒロミちゃーん!!」
と何度も叫んだ。すると、
「こっちだよ」
女の子の声が後ろからした。
だが、まさかその声の主がヒロミちゃんだなんて俺は全く思わなかった。先に進んで行ったヒロミちゃんが、このわずかな隙に俺の後ろに回れるわけもない。
つまり、後ろにいるのは。
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