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アキヤマさんが指差した場所には、コルクボードがあった。
眼鏡をかけて改めて見ると、何枚もの写真と、何枚かの手紙やプリントが貼られている。なかには僕らが授業中に回していた手紙もあった。
「なんだよ、わざわざ飾ってんのかよ」
ナナシが手紙をとっといてくれたことが、なんだか無性に嬉しかった僕はナナシを肘でつついた。
しかし、アキヤマさんはニコリともせず、
「そうじゃなくて。その真ん中。」
と、続けた。
僕は目線を真ん中に向けた。すると、そこには、異様な写真があった。
「…え」
それは、どう見ても心霊写真です、といった感じの写真だった。
写っていたのは、ナナシと先程の背の高い女の人で、見事な夕日を背景にしている。
そこまでは、なんらおかしくなかった。おかしいのは、ナナシの、一部。否、ナナシを囲むもの、というべきか。
女の人にもたれ掛かるようにしたナナシの顔の両端に、白いものが写っている。
それは、手のような形をした、白い靄だった。
「ナナシ、これ…」
「ああ、それか。」
少しガタついてる僕に、ナナシは漫画を置いて、向き直った。
その表情は哀しそうで、そしてどこか嬉しそうでもあった。
「それは、母さんと撮った最後の写真なんだ」
ナナシは、そう言って語り始めた。
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