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『コレ』は、アキヤマさんじゃない。そう気付いた瞬間、「ソレ」は酷く歪んだ笑顔で、体をクネクネさせながら僕に近づいてきた。白目に赤い筋がたくさん浮かび、それでも口元は笑っている。 「うぁあぁあぁあ!!!!!!」 僕は無我夢中で『ソレ』を払いのけ、外に押し込み、窓を閉めた。途端、けたたましいくらいにガラスを叩く音がする。 …内側、から。 「ナナシ!!!ナナシ!!」 僕は半狂乱になりながらナナシを呼んだ。ナナシなら助けてくれる、と漠然に思った。でも、ナナシは僕を見て笑っていた。 「ははははは!!最高だよお前!!!!!」 僕は本気でナナシに殺意を抱いた。 気がついた時、僕は汗だくになって床にヘタリこんでいた。ナナシが自分のTシャツで汚いものを拭くかのように僕の顔を拭っていた。 「結局、あの本は何だったんだよ」 叫び過ぎて掠れた声で、僕はナナシに聞いた。ナナシはヘラっと笑うと、 「降霊術みたいなもんさ」 と言った。 「会いたいものを呼び出せる呪文と方位がのってる。さすがに犬皮使ってる本だから、ヤバそうだとは思ったけど」 いろんなヤバイモンが詰まってるよ、コレ。 ナナシは笑って言った。 「俺じゃなくて、本持ってたお前の会いたいやつが出て来たのは誤算だったな。まあ、中身は違うけど。お前、よっぽどアキヤマに会いたかったんだな。」 ナナシはそう言うと、またヘラヘラ笑いながら本を抱えて歩いて行った。 ちょうど下校の鐘が鳴って、僕もナナシの後を追う。前を歩くナナシの背中を見ながら、僕は思った。 『いろんなヤバイモンが詰まってるよ、コレ。』 『俺じゃなくて、本持ってたお前の会いたいやつが出て来たのは誤算だったな。』 そこまでして、ナナシは 一体 なにを 呼び出したかったんだろう? その答えを知ることになるのは、もう少し、先の話。
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