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それが何を意味する言葉なのか、わからないほど馬鹿じゃない。まさか、と思った。でも、確信してしまった。
「ナナシが…お母さんを…?」
「ここのフェンス、おばさんが落ちるまでもうちょっと低かった。寒い時期だったから、他に誰もいなかったし。」
ふふふ、とアキヤマさんは笑った。アキヤマさんがおかしくなってしまったと思った。そのくらい怖い微笑みだった。
「その日から、ナナシは段々おかしくなった。パッと見何も変わらなかったけど、変なことをするようになった。変なものも、あいつのまわりで見るようになった。藤野もそうでしょ?
いろいろ見たよね?ナナシの家に、おばさんいたもんね?あれは失敗だったみたいだけどね?たいしたことなかったし?
でもね、とうとうやっちゃったの!!!あぶないとは思ってたよ?やりすぎなんじゃないかな、って?でもやっちゃったの!!もう手遅れになっちゃったんだよ!!!知らない!!!!
あたし知らない!!!もうなぁあんもできない!!!!!あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
狂ったようにアキヤマさんは笑い出した。怖かった。アキヤマさんじゃない。こんなのアキヤマさんじゃない。僕はアキヤマさんの両肩を掴んで揺さぶった。
「なんで!!!!!なにが!!!なにが手遅れなの!!???ナナシなにやったの!!!!ねぇ!!!」
「だって!!!!!!」
「 そ こ に お ば さ ん い る ん だ も ん ! ! ! ! ! ! 」
アキヤマさんがそう言って指差した先を見て、僕は全身に鳥肌が立つのを覚えた。言葉がなにも出てこなくて、嗚咽のようなものが漏れた。
そこには、確かに女の人がいた。ラピュタのロボット兵のように手を垂らして、顔はうなだれていて、真っ白いパジャマを着ていた。そして、ゆっくり伏せていた顔をあげて。
グチャグチャに潰れた頭をコキッと横に曲げて、目を見開いて、ニカッと笑った。
「うぁあぁっ!!!!!」
俺は叫んで後ずさった。アキヤマさんは指差したまま笑っていた。
怖い怖い怖い怖い怖い。それしか頭に無かった。以前にもナナシの家で見たはずなのに、全く雰囲気が違う。気持ち悪いとしか言い様が無かった。
「キョうスケぇ、どウしテ逃げルのお?ママ、悲しイナあ?」
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