ナナシ

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そして、僕らはアパートに着いた。 ナナシはひと呼吸置くと、 「終わった、な。」 と言った。 その言葉の意味がよくわからなかった僕は、ナナシに聞き返したが、ナナシは無言のまま僕の手を引いた。 いつものナナシじゃない、お調子者のナナシじゃない。 そんな不安が胸元にチラついたが、ナナシは構うことなくアパートの階段を上る。そして、「302」とプレートのついた部屋の前に立った。異様な空気が、僕の背中を掠めた。 「ナナシ…?」 ナナシは答えないで、ドアの前にあった、枯れた植木鉢から鍵を取り出し、ドアを開けた。 すると、そこには。 「人間だったもの」 が、あった。 「うぁあぁあぁあっ!!!」 僕は大声を上げてヘタリこんだ。玄関先には女のひとが倒れていて、はいずるように俯せている。 その体の下からは、夥しい量のまだ生々しい赤黒い血が、水溜まりのようになっている。 僕はガタガタ震えながら、ナナシを見た。 でも、ナナシは、 「あはははははははははははははははは!!!!!!」 笑っていた。
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