落ちていくモノ

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教科書に隠しながら手紙を書いていた僕は、ドン、と何かに背中を突かれた。 どう考えてもそれは後ろの席のナナシで、「まだ書いてるのに、催促かよ」と、僕は少しムッとしながら振り返った。 するとそこには、眉間に皺を寄せた凄まじい形相で、僕に何かを向けているナナシがいた。 手には開いたノートがあり、真ん中にデカデカとマジックで 「窓」 と書いてあった。 思わず窓を見ると、 「ひっ…」 人と、目が合った。 蛙のような体制で落下してきたその人は、顔だけをこちらに向けていた。 恐怖か苦痛か屈辱かわからない、むしろ全て入り交じったような悶絶の表情を一瞬見せて、その人は消えた。 「うわぁああっ!!!」 僕ではない誰かが叫んだ。叫んだのとほぼ同時に、ドシン、と音が響く。 しばらくフリーズしていた教師やクラスメート達も、2,3秒して騒ぎ立て、窓に駆け寄り出す。 僕はその様子を茫然と見ながら、フラッシュバックを感じていた。
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