切なくも重厚な人間模様【うたわれるもの】

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その青年が目覚めたのは辺境の集落の中にある家だった。 全身に深い傷を負って森の中で倒れていた所を、一人の少女に助けられたその青年は、過去の記憶を失っていた。 そしてその顔には、どうしても外せない仮面が付けられていた。 怪しい風貌の彼に対しても構えることなく接してくれる村人達といくつかの出来事を経て、親交を深めていく青年。 過去を持たない青年は、新たな名前を与えられ、歩み始める。 激動の時代の始まりとは気付かぬままに。 独特な世界観と魅力的なキャラクターの織り成す物語は、実に丁寧にまとめられており、人気ゲームを原作としていながら、ゲームファン以外でも楽しめる配慮がされています。 特に人間ドラマの描き方は秀逸で、立場によっては本人の人柄、思惑とは関係ない決断を強いられる無情さ。 理想と現実のギャップに追い詰められていく苦しさ。 そして、下した決断に対する責任の重さが見事に描かれています。 傲慢故に身を滅ぼす者 無知故に道を誤る者 純粋故に追い詰められる者 過ちと知りつつ、流され引き返せなくなる者 それらを利用する者 善悪を越えた、何気ない言動が、後の事象に影響を与える恐さ 全26話という話数でありながら、要点をきちんと整理したストーリーは、各キャラの魅力を引き出す事に成功しています。 主人公と出会い、接し、各々の試練に苦悩し、成長していく姿を見事に描き出しました。 各々主役が張れる程魅力的な脇役達を暴れさせる事なく、主人公を引き立てた展開、説明台詞に頼らず、キャラの所作、言動で大筋を理解させる手法は、見事の一言です。 惜しむらくは、中盤以降の展開が早く、各キャラの細かい描写が減ってしまった点です。 一年のスタンスで見たいと思わせる良作です。 人々の信望を集め、多くの仲間を得て、やがて善政を布く一国の王に上り詰める主人公。 より良い世の中を目指す中、明らかになる世界の秘密。 そして自身の過去、正体。 彼の決断。 『うたわれるもの』の意味がわかる、あまりに切なくも優しいラスト。 一見の価値ありの良作です。
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