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幼くして母を失い、厳しい役目を継ぐべく、父の下で修業に明け暮れていたその少女【神楽】にとって、彼女は『姉』そのものであった。
強く、優しく、頑なで張り詰めてた心を解きほぐしてくれた。
かたや、幼くして家族を失った彼女【黄泉】
恩人たる人物の養子となり、永く過ごしてきたにとって共に暮らす事になった【神楽】は『妹』であった。
特殊な血統に生まれ、生まれながら才能に恵まれた【神楽】
ごく一般の家庭に生まれながら、不幸な事故をきっかけにの特殊な世界に飛び込み、努力の末に後継者に目されるまでになった【黄泉】
自身が望んだ訳ではないのに辛く厳しい務めを背負った二人。
この世ならざる者達から人の世を守る盾であり剣である彼女達の能力は、望まざるとも、多くのモノを引き寄せる。
それは『恐れ』そして『嫉妬』
味方であるはずの者達にさえ生まれるその感情。
やがてそれらは取り込まれ、罠となり彼女達を締め上げていく。
黄泉の大切な人と過ごしたい気持ちが隙を生み、もう一人の大切な人を失う。
大切な人を巻き込みたくないと、一人で決断し事に臨み、禍根を断つも、多くの代償と新な疑惑をかけられる。
疑惑を晴らす術なく、心身共に深く傷付いた彼女は、人の手により大切なモノを奪われ追い詰められていく。
絶望の底に沈んだ黄泉に囁かれた誘惑。
示された力と可能性は、蕩けるような甘い蜜。
踏み越えたら戻れぬ最後の一線。
それを受け入れた彼女を誰が責められよう?
人を守る為の卓抜の能力は、その瞬間『最強最悪の敵』になった。
わずかな気持ちの揺らぎから、結果として黄泉の背を押してしまった神楽は、深い後悔を抱えつつ僅かな希望を胸に対峙する。
辛い戦いの中、神楽は自らの為すべき事を悟る。
迷いを捨て、覚悟を決めた神楽。
神楽との決戦を前に黄泉が願った事は?
そして決戦の幕は上がる。
日常と非日常の描き分けと、そこから生まれる各キャラの心理描写は秀逸!
本質に悪意はないはずなのに、相手を追い詰めてしまったり、通じ会えないもどかしさ。
理性と欲望に揺れる心理、感情を非常に上手く描かれています。
原作のプロローグにあたる作品ですが、原作未読でも理解できる配慮がなされています。
続編を期待したい作品です。
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