混沌

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頭が痛い。 周りが白くボヤケて何も見えない…… 首が動かない……仰向けになって俺は 寝ている。 俺は起き上がろうとしたが、冷たい地面に背中が張り付いているようで ピクリ ともしない。 左脚が、猛烈に痛い……膝から足首にかけ凄まじい痛みだ。 あたり一面に血の臭いが充満している……それに……草が焦げた臭いと微かに焼けた肉の臭いがする。 俺の小隊はどうなった!…… ルドルフ小隊長は…… ヘルベルト准尉殿は……? 俺の分隊の部下は……無事でいるだろうか……みんな、俺から見れば子供だ、死なせたくない…… 深夜零時に敵地のど真ん中の司令部に奇襲攻撃をかけてから戦況不利の中、撤退を余儀なくされた。 それでも俺の分隊は敵の装甲車両一台と火砲を破壊した。 大成果をあげたが……俺の部下が銃撃を受け殉職した。 部下を面前で失ったショックは大きすぎた。 動揺した部下達を引き連れ小隊に合流した後、丘陵を撤退中に凄まじい爆裂音があったのを覚えている…… 後の記憶はない…… 俺は両手に小銃を握り締めたまま、気絶していた。 ヘルメットと背嚢がない…… 爆撃の瞬間に吹き飛ばされたのかも? こんな状況であっても小銃が手元にあるのが救いだ。 しかし、なにか異様だ。……戦闘の音が聞こえない。 戦闘が終わったにしても、敵陣の間近にいて……何の音も聞こえてこないのはおかしい。 なんだか耳が詰まっているようで奇妙な感じだ。 近接の爆裂音で鼓膜をやられたのか? 音が聞こえないのは不安すぎる。 もう……朝なのか……辺りは白く煙っていて何も見えない…… 俺は暫く目を凝らしていたが、ふとした瞬間……まばたきができないのに気がつき愕然とした。 俺の身体は……どうなった? 目も耳もイカレテル、仰向けのまま動けない…… これでは兵士として戦えない……なんということだ。image=392711305.jpg
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