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「好きですよ、愛してるから、頼むから……笑ってくれ……」
椅子の上の空斗は向きを変えて多海に向き合った。
左手を彼女の頬に添えて雫を拭う。
はらはらと白色道を透明な筋が幾つも通り過ぎた。
「……先輩がね……私に“けじめ”を付ける為に何日も目の前から居なくなったとき……泣いたの。そんなもの要らないからただ、傍に居てほしかった……。傍に居て、何回も抱き締めて、愛してほしかったの……」
「うん……」
「……嫌いだって沢山言った、けど、それ以上にどうしようもない先輩が……空斗が……―――堪らなく、愛おしいの……」
最後の言葉は自然に始まったキスに溶けて消えた……。
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