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「ダメ……じゃない……」
空斗のこととなると多海は弱々しい。語尾が弱くなる。
勝ち誇ったような顔にプライドが崩れる音が聞こえた。
もし、邪魔さえ入らなければずるずる引きずられていただろう。
「おっと……タイミングが悪かったみたいだな……」
「ゆ、悠介(ゆうすけ)君っ!」
「帰るか……。星輝もおいで。今日は家に泊まりなよ」
マイペース過ぎる。自由人な彼に星輝はおどおどする。
両親に似ていないぽわぽわした雰囲気の悠介に空斗と多海は慌てることを忘れてしまった。
5秒ほど静止して、冷静に娘と客を迎え入れる。
「もう帰って来たんですか? せっかく門限伸ばしたのに……」
「悠介君が外が暗くなってから帰すのは危ないからって……」
「だって、空斗さん、星輝のこといつも心配してるから。それに僕も星輝のことが心配だよ。星輝と一秒でも長く一緒に居たかったら僕がこっちに来るからさ」
紳士な振る舞いはきっと父親の良い部分を受け継いだのだろう。
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