はじめての嘘

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 気力の無い返事を寄越した真也に走っていた足を止める。  ぼんやりとする真也の横から体当たりした。 「朝からしけた面すんなよ」 「元からこんな顔だから」  真也はフンと鼻を鳴らして不機嫌を露わにする。  すぐにご機嫌斜めになる辺りが可愛い、と言うより子どもだ。  委員長に立候補したり、勉強出来たり―――普段が大人っぽい反面気を許した相手を前にすると甘えたがりであるようだ。 「お前は良い男だぜ? 成績は優秀、運動神経もそこそこ。昔からそれなりにモテるだろ?」 「別に……興味ない……」 「へぇー。勿体ないな。俺が女ならファンクラブ作りたい」 「……女じゃん……」 「ばっかだなぁっ! 俺は女だけど男なのっ! 分かる?」 「ややこしい……」 「ったく、理解者なんだか、そうじゃないんだか分かんねぇなぁ」  叔母に当たる月(るな)と同じ病気だとは聞いている。  彼女、玲奈(れな)は体はどう見ても女の子だ。だが、それを受け入れられない心を持ち、それが服装に現れている。  学ランで真也に並ぶとたちまち美少年となった。
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