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田舎特有なのか、都会と違ってはっきりと見える星空や月の光は、夜道でも十分な視界を確保してくれていた。
俺は携帯電話を開き時間を確認した。
外に出てから30分は経過している。広場まではあと少しだろう。
碁盤の目に整備された奥羽の道の中で一際大きい道が交差する場所が広場であり、ちょうど奥羽の中心となっている。
広場が見えてくる。
何もない開けた場所。そこに見えるのは一つの影。
青白い光りに照らされた着物を着た少女。
白銀の髪に紅の瞳。透き通るような白い肌。
肩甲骨辺りまで伸びた後ろ髪は一つに束ねられている。
背はぱっと見て160くらいか。
俺はいつの間にか歩みを止めて、少女に見入っていた。
そして銀髪の少女と俺は互いに目を合わせた。
瞬間、釣り目がちだが愁いを帯びた少女の端正な顔は驚きへと変わる。
「!」
少女は背を向け、そのまま走り去っていく。その後ろ姿は直ぐに見えなくなってしまった。
「……俺、何かしたか?」
そろそろ家に戻ろう、そう思い俺は帰路についた。
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