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きっと、俺自身に問いかけても分からないだろう。
「なら、改めてよろしくな姫夏。短い間になるかもしれないが」
きっと、これが答えだと思う。少なからず俺は姫夏と仲良くなりたい。
俺は過去を追って奥羽に来たわけではない。父の遺産を受け取るか、放棄するか、それを奥羽で過ごして決めるためにここに来た。
その過程でこの少女と偶然に出会い、俺は自分がここで過ごしていたことを知っただけ。
ならば、重要なのは過去ではなくこれからを選択することだ。
「うん、よろしくね荒人くん」
姫夏の表情が一際、眩しく輝いたような気がした。
「でもさ、短い間になるかもしれないってどういうこと?」
「ここを放棄する。そういう選択肢もある」
「荒人くんの気持ち次第で短い間のよろしくか、末永くよろしくになるか決まるってことだね」
「さあ、それは分からない」
姫夏は目を丸くして驚く。
「だって、荒人くんが決めるんでしょ? 遺産を受け取るかどうか?」
俺は自分の気持ちが分からない。きっとここを好きになれたとしても、違う選択をしているかも知れない。
「そうだな、俺が決めることだ」
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