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事実は小説よりも奇妙なり。誰が言った言葉か知らないが本当のことだ。
俺はバスの窓から外の景色を見ながら、そんなことを考えていた。
バスが向かう先は宮城県黒川市奥羽。郊外にあるドが付く程の田舎だ。
その奥羽に父の実家があるらしい。
らしい、という言い方をするには理由がある。
俺は父がいることを知らなかった。というのも母は別居していて、母に引き取られた俺は父がいないと思っていた。
さらに、父のことなど一度も話すことなく、母は5年前に他界してしまったからだ。
顔も知らない父のことを知ったのはつい先日、税理士の大原さんからの電話でだ。
大原さんは5年前に他界した母の親友で、懇意で俺の身元引受兼保証人になってくれた人だ。
電話の内容は父の遺産についてだった。
父が書いた遺言書は、財産を全て坂上 荒人(さかがみ すさひと)に相続させる。但し、坂上荒人が18歳になるまでは相続させない。
大原さんの話しだと、父は母と同じく5年前に他界していたらしく、俺が18歳を迎えるまで秘密にしていたらしい。
ちなみに坂上荒人は俺の名前で、父は武荒(たけすさ)というそうだ。
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