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俺の名前はウエムラ・サナエ。
女みたいな名前だけど歴とした男です。
現在高二の17歳。
中学時代は小学生から続けていた野球に明け暮れ、スポーツ推薦で今の高校へ。
しかし高一の夏合宿で膝にケガをしてしまい、辛くも俺の選手生命は絶たれた。
「てのが大ざっぱに俺なんだけど、選手生命が絶たれたショックからようやく立ち直ったと思ったら、今度は純粋に生命が絶たれるって何だよ」
「そのまんまだよぉ」
今、俺の目の前には人間には有り得ない深い青色の髪と瞳を持つ幼い少女。
異質なのは髪や瞳だけでなく、その肌はほぼ白に近い紫色で、どこか神秘的なオーラを放っている。
頬杖を付きあぐらをかいた体勢で宙に浮かんでいる。
「ウエムラ・サナエ。キミはねぇ、5月21日午後9時41分12秒、バイト帰りに信号無視の自動車に跳ねられ死亡したんだよぉ。即死で良かったねぇ」
少女は花のような笑顔を浮かべるも、俺の心は逆に萎れていく。
「最悪だ……」
がっくりと肩を落とし両親と妹の顔を思い浮かべる。
俺が死んだと知ったら泣くだろうか。
母さんや妹は俺のケガを知った時に泣いてくれた。
その俺が今度は死んだと知ったら。
父さんはケガを知っても何も言わなかった。
ただじっと目を閉じ一言「そうか」と言っただけ。
でも俺は父さんが一番ショックを受けたことを確信している。
父さんは長男である俺の活躍を一番喜び、一番誇りに思っていた。
甲子園常連の強豪高に推薦が決まったときに、あまり感情を出さない父さんが手を叩いて喜んでいた。
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