◆異世界召喚

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息子の姿を甲子園で見るのを楽しみにしていた。 その俺がケガをしその夢は絶たれ。 挙げ句今度は事故で死んだ。 父さんの背中を思い浮かべ、視界がじわりとぼやける。 やべ、泣きそ……。 俺はぎゅっと歯を食い縛り、俯いた。 少女はそんな俺を黙って見つめている。 天国に来たのかと勝手に思っていたが、辺りは一点の光もない真っ暗闇。 こんなところで死後を過ごしたくはない。 「今の気持ちを一言で言うとなぁに?」 すっとぼけた質問にふざけてるのかと、俯いていた顔を上げると、少女は真っ直ぐに俺を見つめ真剣な表情をしていた。 その強い青い瞳に一瞬圧倒されるも、俺は真っ先に浮かんだ言葉を発する。 「……無念」 昔の侍か?という言葉だがこれしか浮かばない。 自分の未来も何もかも絶たれ、無念としか言いようがない。 少女は真剣な表情を崩すことなく、少し目を細め俺を見つめた。 ふいにすっと腕を伸ばすと、その小さい指を俺に向ける。 「ウエムラ・サナエ。キミ、気に入ったぁ」 「えっ?」 少女は真剣な表情を崩しへなっと微笑み、それに対し間抜けな声を発する俺。 「気に入ったから、とりあえず異世界に飛んでもらうよぉ」 「はぁ?」 この子、真剣な顔をしたと思えばアホそうな言動をしたりで全く掴めない。 「無念でしょう?生きたいんでしょう?」 少女はにこにこととんちんかんなことを言っている。 「確かに生きたいけど、それは違う。俺は家族とか友達とかと」 「うぅるさいな。わかってるよぉ」
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