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少女は笑顔のままぱたぱたと手を振る。
「残念ながらウエムラ・サナエを現世に送ることは出来ないんだぁ。それはルールだからねぇ……でも、異世界にだったら行けるよぉ」
少女は暗闇の中で座ったままくるりと一回転した。
紫と青が混ざった不思議な色のワンピースの裾が揺れる。
「異世界に行ったって……意味がない」
「まぁ最後まで聞きなよぉ」
少女は座った体勢で足をぶらぶらと揺する。
ずっと思ってたけどこの子は何者?
ここが天国なら神様とでも言いそうだけど、どうも天国とも思えないし。
「そうそう、ここはどこでもないよぉ。あえて言うなら時空間?」
「じ、時空間?」
現実味のない単語に俺は戸惑うことしか出来ない。
でも死んだんだから、時空間とやらに居てもおかしくないのかな、と無理やり納得。
「そう。全ての世界に通じる駅とでも思えばいいかなぁ?世界から世界に移動するときは、必ずここを通るんだよぉ」
「なんとなく理解した……」
「賢い子だねぇウエムラ・サナエ。ますます気に入ったかもぉ。でね、私はこの空間の主。時空の神、菫青童子(キンセイドウジ)。ここを通るには私の許可がいるんだぁ。キミは気に入ったから、ちょっとサービスしてあげるぅ。意味わかるかなぁ」
菫青童子と名乗った少女は小首を傾げる。
時空の神と言われても何故か素直に受け入れることが出来た。
この少女が放つオーラは、何か神的なものを感じさせる。
時空の神と言われて驚くどころかむしろ納得。
「父さんたちに会わせてくれるのか……?」
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