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どこから仕入れてきた情報なのか松田が言うには、十年くらい前に男の子とそのお母さんがその踏切で亡くなったらしい。
なんでも誰かのいたずらで男の子の足が踏切の隙間から抜けなくされ、助けようとしたお母さんもろとも電車にはねられたそうな。
要するに心霊スポットだ。
いつもなら嫌がるところだが、せっかくの旅行だし、何より部屋に帰ればケイさんがいる。
そんな甘えもあって、俺はその踏切に向かうことにした。
着いてみれば、なんのことはない。フツーの踏切だった。
花が添えられているわけじゃないし、血の跡なんかもない。
拍子抜けして帰ろうとした、でもそのとき。
「記念撮影しよう」
と松田がカメラを取り出した。
つくづく準備のいいやつだ。しかし結局は何もなかったし、まあいいか、と写真を撮った。
その後、てくてく歩いて旅館に帰ると、玄関に仁王立ちしたケイさんが立っていた。
そして、俺を見つけるなり
「…来い。」
と腕を無理矢理引っ張った。腕を握る力はやたら強くて痛くて怖かった。なんで?なんでこの人怒ってんの。わけもわからないまま俺はオロオロしながら部屋に連れてかれた。
そして、部屋に着くなり
「脱げ。」
と言われた。
このひとソッチの趣味あったの!?つうか困るし!!!と慌てふためいていると、痺れを切らしたケイさんが自ら俺の服を捲りあげた。
そして、見事に舌打ちすると
「馬鹿野郎!!!!死にてぇのか!!!」
と突然怒鳴り、ひっぱたかれた。
意味がわからず、怖くて仕方なかった。ケイさんはいつも以上にキレていた。
「ガキが一番危ねぇんだぞ!!!なんでそんなことがわからねぇんだ糞ガキが!!!!」
と目茶苦茶怒鳴られ、胸倉を掴まれる。叩かれた頬がヒリヒリして痛かった。たぶん俺は号泣していた。
そんな情けない俺に多少落ち着いたのか、
「…ゴメンなさいは?」
と聞いてきた。俺は迷わずゴメンなさいと答えて、情けない話だがしばらく泣いて居た。
その後、ケイさんに服を捲って鏡を見るよう言われて実行した。すると、ちょうど俺の腰あたりに、くっきりと歯形がついていた。何かに噛まれた記憶なんてないのに。
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