第1章

8/20
前へ
/22ページ
次へ
午前10時を過ぎた頃、僕達は喫茶店でアイスコーヒーを飲みながらゆっくり寛いでいた。 やっぱり、クーラーが効いてる場所は爽快だ。僕は外で暑そうに歩く人達を窓越しから眺めながら、ゆっくりと安堵のため息を漏らした。 「ごめんね、いきなり誘っちゃって」 「いいですよ。私も暇ですし、叶夢さんに誘ってもらえるなら光栄ですし」 と、凛ちゃんははにかんだように笑う。 そんないつも誘ってるじゃんと、会話の流れのまま言い返そうとしたが、口を噤んだ。 言われてみれば、確かに凛ちゃんは真琴と仲良しだったから、よく頻繁に顔を合わせたことはあったが、2人でこうして顔を合わせるのは稀なことだった。 「そういえば、凛ちゃんってなんのお仕事してるんだっけ?」 僕はそのまま、話題を切り替えることにした。 「書店の販売です」 「ああ、そうだったよね。確か駅近くにある、大きな本屋さん」 「そうです」 「大変?」 「いえ。最近、少しずつ慣れてきたんで、そうでもないですね。ただ、今ちょうど文庫本が売れるんで、ちょっと発注が大変です」 「そっか。夏休みシーズンは、読書感想文で本買いに来たりするもんね」 「ええ。叶夢さんは最近、どうです? 保育園のお仕事は?」 気を使ってか、今度は凛ちゃんが反対に質問を投げ返してくる。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加