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「真琴、言ってたんです。叶夢さんは、本当は涙脆くて、頼りなくて。でも、いざという時は芯が強い優しい人で……だから、きっと私の前で普通に振る舞っているのは、きっと頑張っているに違いないって」
「真琴は気付いてたの? だとしたら、僕の行動は重荷だったんじゃ」
僕はその真実にショックを受けていると、凛ちゃんは吹き出したように笑った。
「なに言ってるんですか? 逆ですよ。真琴はそんな叶夢さんを見て、残りの人生、精一杯生きようって決心したんですから」
「ど、どうして?」
「ああ……いえ、これ以上言ったら真琴、怒ると思います」
「大丈夫。もう、時効だよ」
真意を知りたくて僕も適当なことを言う。天然なのか、その言葉に凛ちゃんも「確かにそうですよね」と納得したように頷く。
「私は叶夢を愛しているから。だから、その叶夢が私の目の前から逃げ出さずに、最後まで私を看取ってくれると決意をしてくれるなら、こんな嬉しいことはない。だから。私も一緒に最後の最後まで、前向きに頑張って生きてみるって言ってました」
「そう、なんだ」
何故だろう。
僕はその話しを聞いて不思議と、驚きや嬉しさといった感情はなかった。
言われてみれば、真琴は入院中にたった1度だって『死ぬのが怖い』と弱音を吐いたり、僕に対して『無理してるんじゃないの?』といった質問を投げつけてくることは決してなかった。
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