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いつだって、目の前の死を素直に受け入れて、残りの人生を前向きに楽しく生きようと真っ直ぐ生きていた。今思えば、その真琴の行動自体が強がりだったかどうかは今となったらわからない。
ただ、一つはっきり言えることがある。
それは、僕も真琴も強がってはいたが、けして無理をしていたわけでないということだ。
そう。傍からみれば大変だとか、無理していると思うかもしれないが、実際それは間違っている。僕達は愛し合っていたからこそ、それをお互いにまるで、自然にそう思いやることができたわけだから……それが、他者から偉いとか、凄いと思われるのは筋違いなことに思える。
「ですから今、叶夢さんがそんな風になっているのは普通なことです。だって、真琴が生きている間はけして、涙を零すことも落ち込んだりすることすら、耐えてきたんですから……だから今はもう、強く振る舞う必要もないんですよ」
凛ちゃんのその励ましといえる言葉に僕は一瞬、動揺した。
そう。真琴が生きている間だけではなく、僕は無意識に今もなお、強く振る舞っていることを完全に凛ちゃんには見抜かれている気がした。
「ありがとう。少し前向きに考えるよ」
ただ、そう適当に促して、僕は凛ちゃんから視線を逸らした。
別に凛ちゃんに言われたことは嫌だとか癪に障ったわけじゃない。ただ、正直、わからなかった。
自分が今だに尚、強がっているかどうかも。
それもそうだ。僕自身、果たして『自分』というモノを持っているかどうかも疑問なくらいだ。
その場、その場で顔を変えるような、事なかれ主義の僕が唯一、自分を等大身(ありのまま)をさらけ出した真琴にすら最後には、強がって振る舞っていたのだから。
もしかしたら、等大身で素直に生きる方法すら、もう忘れてしまったのかもしれない。
仮にそうだとしても、どうでもよかった。
今はまだ……なにも考えたくなかったから。
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