第1章

3/20
前へ
/22ページ
次へ
「どうしたの? 叶夢センセー、ここのところ、1人でぼんやりしてること多いよ。大丈夫? 悩みがあるなら、こはるが聞いてあげるよ」 「こはるちゃん、ありがとう。でも、大丈夫だよ。最近、蒸し暑くなったからね、頭がぼーとしちゃうんだ」 「ふーん」 「そうだ。冷蔵庫にスイカあるから、みんなで食べようか?」 「えっ! スイカ! うん、食べる、食べるー!」 僕はホースの水を止めると、こはるちゃんと手を繋いで、保育園の中へと歩きだした。 その時、僕はまたふいに空を見上げてしまった。 こんな小さな子にまで、心配されてしまうとは僕もまだまだだな。 無理もない。 あれから、もう2ヶ月が過ぎるとはいえ、真琴は僕にとっては、この世で一番、大切な人だったんだ。 それを失ったのだから、そう簡単に人の心なんて切り替えられるものでもない。 そうだ。僕だって人間なのだから。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加