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「凛ちゃん、今日お仕事は?」
「お休みを頂きました」
「そうなんだ」
「叶夢さんは?」
「僕も同じだよ」
僕はビニール袋から線香を取り出し、墓石に近づくと、添えてあった花に少し違和感を覚えた。
「あれ、この花」
そこに添えてあった花は見覚えがあった。青い綺麗な花で、確かこの花。
僕は振り返って、凛ちゃんに尋ねてみた。
「ねぇ。この花は凛ちゃんが?」
「あっ、はい。そうです」
「確か1ヶ月目の命日の際にもこの花が添えてあったけど、それも凛ちゃんが?」
「ごめんなさい。それも私です」
「いや、謝らないで。ちょっと、気になっただけだから」
凛ちゃんは恐縮です、とでも言いたげな顔をするので、僕は慌てて否定する。そして「へぇ。そうなんだぁ」とわざと明るい声をだして、僕は線香をあげながら、その花をじっと見つめていた。
「忘れな草です」
突然、凛ちゃんが後ろからいつもよりも、はっきりした声を発したので、僕はぽかんとした顔のまま振り返ってしまった。
凛ちゃん、そんな大きな声出せたんだぁ。と、内心驚きながら。
「忘れな草?」
「その花の名前です。真琴の好きな花なんですよ、忘れな草は」
「へぇ。それは知らなかったよ」
「ちなみに花言葉は【私を忘れないで】です」
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