第1章

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「凛ちゃん、今日お仕事は?」 「お休みを頂きました」 「そうなんだ」 「叶夢さんは?」 「僕も同じだよ」 僕はビニール袋から線香を取り出し、墓石に近づくと、添えてあった花に少し違和感を覚えた。 「あれ、この花」 そこに添えてあった花は見覚えがあった。青い綺麗な花で、確かこの花。 僕は振り返って、凛ちゃんに尋ねてみた。 「ねぇ。この花は凛ちゃんが?」 「あっ、はい。そうです」 「確か1ヶ月目の命日の際にもこの花が添えてあったけど、それも凛ちゃんが?」 「ごめんなさい。それも私です」 「いや、謝らないで。ちょっと、気になっただけだから」 凛ちゃんは恐縮です、とでも言いたげな顔をするので、僕は慌てて否定する。そして「へぇ。そうなんだぁ」とわざと明るい声をだして、僕は線香をあげながら、その花をじっと見つめていた。 「忘れな草です」 突然、凛ちゃんが後ろからいつもよりも、はっきりした声を発したので、僕はぽかんとした顔のまま振り返ってしまった。 凛ちゃん、そんな大きな声出せたんだぁ。と、内心驚きながら。 「忘れな草?」 「その花の名前です。真琴の好きな花なんですよ、忘れな草は」 「へぇ。それは知らなかったよ」 「ちなみに花言葉は【私を忘れないで】です」
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