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私を忘れないで。
その花言葉を耳にした瞬間、僕の頭に閃光が走った。
忘れるはずもない。
その言葉は真琴が死ぬ間際、まるで、遺言のように残していった言葉だ。未だにその言葉の真意を理解できていないままだが、まさか真琴の好きな花の花言葉だったとは。
僕は線香をあげると、手を合わせて1分ほどの間、拝みながら目を閉じた。
『成仏するように』と『みんな、健康に暮らしていること』そして『自分は元気にやってること』を報告した。まあ、自分は元気にやっていることに対しては嘘の報告かもしれない。
目を開き、視界がぼんやりと戻り、蝉の鳴き声が耳に心地良く響いた。
「そうだ? もし、暇だったら今からお茶でもどう?」
このまま、クーラーもない蒸し暑い家に帰るのは、億劫なのでいい機会なので気軽に誘ってみた。少し驚いた顔をみせた凛ちゃんは、ふと考えるような仕草をみせると目を合わせず、照れ臭そうに頷いた。
ちょうどいいことに、凛ちゃんは免許を持っているものの、車を持っておらず、バスでここまで来たというので、そのまま僕の車に乗せて、よく行くおすすめの喫茶店に向かった。
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