彼女

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廊下を歩いたのは二度目だった。 一度目は、編入試験。 内容に自信があったわけではなかったが、もうそのときは生徒になったつもりでいた。 乾いた音を響かせながら、大輔は職員室の目の前まできた。 『失礼します』 たどたどしく挨拶をし、勢い良くドアをあけた。 職員室は、変に慌ただしくしていた。 『あの…』 誰かを呼ぼうとしても、誰も大輔に気付きはしなかった。 『あの!』 大輔は、少し大きな声をだして呼び掛けた。 すると、一人の男性教師が大輔を見やった。 『あ、君もしかして堤くんかい?』 にへら顔の男は、額に大量の汗をかいていて、それをハンカチで拭いながら近づいてきた。 『僕は大橋、君の担任だから、よろしくね』 『あ…はい』 大輔は、圧倒されながらも笑顔を向けた。 『ごめんねぇ、慌ただしくて、ちょっとたてこんでてね』 『何かあったんですか』 大橋の顔が、一瞬固まるのを大輔は見逃さなかった。 まずいことを聞いたのだと思い、少しだけ後悔をした。 『実はね…』 大橋が唾をのみこんだ。 『今朝、亡くなったんだよ、ここの教師が』
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