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雨が降りそうなほどの厚い雲に、より心は鬱蒼と嫌なものになる
大輔以外の全員が泣いていた
泣きじゃくる学生のあまりの多さに、前方に飾られた写真の人物がいかに好まれていたかがわかる
だがそれは、大輔にはなにも関係のないものだった
吉田和男…
大輔は、なんどもその名前を目でなぞった
それが、このあまりにいきなりの死を遂げた教師の名前だ
どこにでもいるような、40過ぎのおじさんである
長いお経に、大輔は舌打ちをした
自分がその場にいる意味がわからなかったからだ
こんなもの、ぶっちぎってしまえばよかったが、律儀な性格がたたってしまって、おとなしく出席させられている
大輔は自分の性格を恨んだ
ふと、まわりを見回した
女生徒たちが、肩を寄せ合って泣いている
大柄ながたいのよい男生徒も惜し気もなく泣いていた
不意に目が止まった
彼女は、まっすぐに前方の写真を見つめていた
その目から、涙なんてひとつも出てはいなかった
短い髪は、綺麗な形の耳を一層引き立たせていた
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