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「どうしたの?」
お茶を持って戻ってきた龍華は、怪訝そうな顔で3人の顔を見た。
「館長…」
「何?」
しばしの沈黙の後、雅樹が口を開き、壁画を指さした。
「なぜ、その壁画に弟が描かれているんですか?」
「…何を言っているの?なぜ彼が雅人君だと思うのかしら。彼は15年前に死んでいるじゃない。その時、彼はまだ3歳だったのよ?皆の中では彼は今も変わらず子供のまま。成人した姿で描きようがないし、もし描けたとしてもすぐに、この絵の彼が雅人君だと解るわけがないわ」
「ならば何故龍華さんは、私達から目をそらすのですか?本当ににこの人が、雅人ではないと言うのであれば、私達の目を見て言えるはずです」
その時の鈴音の瞳からは、どこか強い意志が感じられた。
そんな鈴音を見た龍華の唇からは、ため息が出た。
「…知らなくても良いこともあるのよ?」
「それじゃあ、あの壁画に描かれているのは、本当に雅人くんなの?」
乃衣瑠の問いに、龍華は静かに頷いた。そのまま、龍華が壁画に近づいたその時、龍華の姿が変化した。
一瞬、銀色の龍が現れたかと思いきや、3人の前に現れたのは、銀糸の髪と紫色の瞳を持つ、龍華であった。
「龍華さん、その姿は…?」
「私は竜人龍華(りゅうじんロンファ)。この七つの海世界と、七つの陸世界を繋ぐ扉であるこの壁画を守る者。真実をしりたければ、七つの陸世界へ来なさい。」
龍華がそう言うや否や壁画が光り出し、その光は4人を飲み込んだ。
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