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片道4時間をかけて、俺を乗せた電車は『美岬』から『葉桜』駅と到着した。
久しぶりの地元である。
葉桜で下車した人に交じり、ぞろぞろと改札口へと向かう。
理央とは葉桜の改札口で待ち合わせだ。
半年近く会ってなかったから、会うのが少し照れる。
どんな顔で会ったらいいか分からないが、理央は笑顔で迎えてくれると思う。
改札口への階段を上りきり、改札を出ると、まだ理央の姿はなかった。
駅に備えつけてある時計を確認すると、待ち合わせした時間まで少し余裕がある。
(にやけた顔を見られなくて良かった)
きっと今の俺は人に後ろ指をさされるような、デッサンが崩れた顔をしているだろう。
何しろ、こんなにドキドキするのは久しぶりだから。
理央との再会がすぐそこまで近づいてるから、余計に照れてしまう。
くすぐったいような気持ちだ。
その時、携帯が振動した。
携帯を開くと、理央からのメールである。
『もうすぐ着くから』
絵文字や顔文字を使った理央のメール。
『ゆっくりでいいよ。待ってるから』
絵文字も顔文字もない、無機質なメール。
どうして理央がこんなつまらない俺を好きになってくれたのか分からない。
でも俺はこうして待つのも楽しいし、幸せだ。
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