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「もうすぐランチタイムで忙しくなるから簡単なもので申し訳ないんだけど、雨が止むまでゆっくりするといいわ」
トレイをテーブルの上に乗せると、宇佐美店長はすぐに出て行ってしまった。
(宇佐美店長にも聞きたかったんだけど)
ランチタイムでは仕方ない。
だが、俺は先ほどの理央の様子がかなり引っかかっていた。
(空気が重いな…)
俺は重い空気を払拭するかのように、声のトーンを上げて言った。
「冷めないうちに食べよう、理央」
「え、えぇ…」
理央の分を配膳すると、パスタ用の丸いスプーンとフォークを使ってパスタをくるくると回した。
その様子を見てか、理央は俺の隣に座った。
「夕貴の作る食事も久しぶりだな。いつも賄いは夕貴が作るのか?」
「うん。マネージャーだからホールもやった方がいいんだけど、西田さんはキッチンにいるのが好きな人だから」
俺がホールにいたいのと同じである。
「それにしても…雨、止まないね」
理央の言葉で窓の外に視線を投げ出すと、激しい雨が窓を叩きつけていた。
時折、空が光っている。
どうやら雷のようだ。
この分ではしばらく雨は止まないだろう。
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