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久しぶりの再会だというのに、俺と理央は雨の話題から黙々と夕貴の作った食事を口に運んだ。
ホールから少し離れている事務所は静かで、カチャカチャとスプーンとフォークの音だけがやけに響いた。
そして食事が済み、俺は煙草に火をつけた。
理央に煙がいかないよう、携帯灰皿を持って窓のそばで吸う。
外を見渡すと、空は生憎の曇天模様。
見渡せる街はほとんどが灰色に近い。
窓にはわずかに陰りを帯びた自分の顔が映っていた。
自分の顔から視線をゆっくり逸らすと、スープを飲み干した理央が見える。
そして食べ終えた食器を重ねていく。
(本当に彼氏失格だ)
ぼんやりと思った。
理央に楽しい思いをさせてあげられず、お互いにテンションを低くしている。
(花沢 直人…)
察するに花沢さんの身内だろう。
花沢さんの弟か兄かは分からないが、理央の反応を見るともしかしたら面識があるのかもしれない。
花沢さんの恋人だったのだ。
面識があったとしても不自然じゃない。
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