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そしてもう一つ気になるのは木ノ下AMだ。
いつも穏やかで冷静な木ノ下AMが状況を把握しきれてなかったし、困惑していた。
カトレアの本社で何が起こってるのか分からない。
ただ噂が本当であれば人事異動する時期ではない。
今は春ではなく冬なのだから。
俺はそっとため息をつくと、携帯灰皿に煙草を押しつけた。
「凱、煙草を吸うのね。初めて知ったわ」
「あ、うん。1日に一本吸うか吸わないかの量だよ」
俺は再び理央の隣に座った。
「…なぁ、理央」
「ん?」
理央の手に自分の手をそっと重ねる。
理央と視線が絡まった。
「どうしたの?」
「髪、だいぶ伸びたね」
去年、オランダで理央と再会した時、腰まであった理央の髪は肩までばっさりと切られていた。
今では腰までとはいかないが、それでも伸びている。
(違う、こんな話がしたいんじゃない)
脳内で別の俺がそう叱咤する。
結婚の話がしたいのだ。
理央に結婚の意思があるのか否かを。
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