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「発注してた食材が届いたんだけど、卵が多いの!あ~、もう早く来て!」
飯泉店長が俺の手をむんずと掴み、キッチンへとぐいぐい引っ張る。
「飯泉店長、落ち着いて下さい。卵は逃げませんから」
そう言いながら、前回の発注のことを思い出した。
確か前回の発注は飯泉店長が担当していた。
本来、カトレアでは事務仕事というのはマネージャーではなく店長の仕事である。
ただ、飯泉店長はキッチンにしろホールにしろ、物事すべてにおいて不器用なので、4号店では特例としてマネージャーが事務仕事を担当している。
その代わり、飯泉店長がホールやキッチンに入り、マネージャーの俺はよほど忙しくない限りはホールやキッチンに出ないのだ。
飯泉店長は一生懸命に仕事しているのだが、不器用な性格が災いして空回りしてしまっている。
でも飯泉店長の一生懸命さを知っている俺や他の社員達は、飯泉店長の人柄故に責められない。
明るく元気な飯泉店長は4号店のマスコット的な存在で、みんながフォローし合っていた。
さっき言った日常茶飯事というのは、こういうことも含まれている。
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