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「確かに、この卵はうちの発注ミスですね」
日付や発注を担当した名前、届いた食材とその数量を確認しても業者には何の落ち度はない。
「帰っていいですよ。この卵はうちのミスですから」
「マネージャー!」
コックは困った視線を俺に向けた。
帰って行く業者を見送ると、俺は注文書を飯泉店長にびらっと広げて見せた。
「飯泉店長。この発注を担当したのは飯泉店長でしたね」
注文書には飯泉店長の名前が書かれている。
「はい…」
俺に怒られると思ってる飯泉店長は、小柄の体を更に小さくさせた。
「何か反論はありますか?」
「いいえ、ないわ。1を間違えて2回押してしまったみたい」
「言い訳なら聞きませんよ。この卵、どうするんですか?」
「うっ…」
返事に詰まらせ、飯泉店長は俯いてしまった。
「ごめんなさい…」
俺は嘆息し、腕時計にちらっと目をやった。
もうすぐランチの時間である。
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