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涙で滲み、輪郭しかわからないその影は頭からすっぽりと外套のフードを被っている。
影は静かな足取りで近づいてきた。
男なのか、女なのか。
背は高いのか、低いのか。
なにもわからない。
それでも手を伸ばす。
助けてくれと手を伸ばす。
救いを求めて手を伸ばす。
永遠のように長い一瞬。
一瞬より短い永遠。
影がゆっくりと手を伸ばし、差し出された手を無視してそっと口元が塞がれた。
されるがままに血に塗れながら、ただ救済を願う瞳をフードの影に向けることしかできない。
影はもう片方の手を外套の下に伸ばし、そして取り出した薄い薄い刃をそっと私の喉元へと添えた。そして
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